ランボー全詩集

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ランボー全詩集
平井啓之湯浅博雄、中地義和 訳
青土社 発行
1994年6月27日 第1刷発行
 
 
この本は、アルテュールランボーの作品や書簡、および最新の研究成果をまとめたものです。
普段自分が読んでいるのは堀口大学訳のものなのですが、やはりそれと現代の研究者の訳は趣が違いますね。
堀口訳は文語的であり、飛躍した部分も多いようです。
まあ詩は韻や調子の問題もあり、なかなか訳するのが難しいようです。
自分の好みとしては、初期の放浪癖のあるような作品がわかりやすくて好きなのですが、今回改めて読んでみて、後期の作品集「イリュミナシオン」の中の「H(アッシュ)」という不思議な作品が気になりました。
「オルタンス」という女性名について、何かを暗示しているようなフレーズが並びます。そして最後にそして最後に「オルタンスを見つけよ」というフレーズで閉じられています。
詩の解説では「結局答えを明かさず、読者を不満と焦燥のなかに宙づりにして閉じられる」とありました。
謎が謎を呼ぶ、いかにもシュールレアリストとしてのランボーの真骨頂らしい作品です。
その「オルタンス」には、いろいろな説があるようでが、いずれもランボーらしく不道徳なもののようです。
そんなことに対して、全体的に妙に大上段というか、今風に言うと上から目線で大げさに仰々しく語っているのが、なんとなく滑稽に感じてしまいました。
まあこんな鑑賞法では、お前はまったくランボーを理解していないのか、と怒られそうですが・・・。
それにしても、この詩一篇だけの解釈だけで、一冊の本を書いてしまったイタリア人女性研究家もいるそうですから、奥の深い世界ですね。
 
(画像はwikiからです)