「キリストの変容」の内容について(絵画館、ヴァティカン美術館)

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「キリストの変容」の遍歴に続き、内容について述べたいと思います。
なお、画像は、見やすさを考慮して、wikiからお借りしました。
 
この絵の上部は、キリストが空中に浮かんでいます。
一緒に、モーセとエリアが浮かんでいます。
そして足もとで倒れて、あたかも圧倒されているように見えるのはキリストの弟子たちです。
キリストが、いつもの痩せこけた表情でなく、どことなく丸顔で元気そうなのは、「変容」したからかもしれませんし、ラファエッロ独自の「神を人間に近づけた」努力なのかもしれません。
 
下の部分には、癲癇病を患っていた少年が、キリストの奇跡により治癒した物語を描いています。
一応は別々の話で、上下の色調は明らかに違っています。
その一方、下の部分の奇跡に立ち会った群衆の身振りにより(彼らの腕の方向が、上のキリストに向けられていることからなど)、上下がしっかりと結びつけられています。
これによりこの絵が単純な「変容」を描くだけでなく、悲惨な地上の話と結びつけ、よりドラマティックな情景を演出したと言えるでしょう。
 
この作品がラファエッロの絶筆となりました。
「創造的刺激に満ち、けっして優柔不断や苛立ちを経験したことがなく、すぐれた調和と均衡を保ちながら熟考し、探求に没頭して情熱的な短い生涯をおくった芸術家の最後の遺産」(ブルーノ・サンティ)
という賛辞が、この作品にはふさわしいと思います。