滞欧日記 澁澤龍彦著

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滞欧日記
1993年5月10日 3版発行
 
 1970年~1981年にかけて、澁澤氏の4度にわたるヨーロッパ旅行時に、書き残していた日記を本にしたもの。
 澁澤氏の作品は読んだことはないのだが、マルキ・ド・サドなどを扱っていることから、なんとなくおどろおどろしい感じをもっている。それでもこの日記自体は普通の欧州旅行という感じである。ただし写真ではいつもサングラスをかけているのと、奥様同伴にもかかわらず、時々現地のポルノグラフィーを買っているなど(もちろんこの方の場合研究用にもなるのだが)は、やはり独特な雰囲気がする。
 日記といっても、もともと体裁は整えて書かれており、違和感なく読むことができる。ただそれでも編集には苦労されたようで、校正も極力原文を尊重するようしており、原資料としての価値を損なわないように配慮していた。都合により省略したところもちゃんと(一行省略)などと書いているのだが、そこに何が書いてあったのか妙に気になってしまう。
 また、澁澤氏が訪問した街や名所旧跡について、後段でまとめて解説しているのはありがたい配慮である。
 
 ストラスブールでシュークルートを食べるが、「じつにうまくない。」と澁澤氏。たしかにこの食べ物は好き嫌いがはっきりするものだと思う。
 
 シャンティイに行った時、駅前のビヤ・ホールのボーイによると、城までは歩いて20分だと言われたが、意外に遠かった。澁澤氏たちは、高級住宅街や商店街のようなところを通ったようだが、競馬場のあたりを通れば、ボーイの言う通りかもしれなかった。
 
 シエナの街並みを高いところから眺望すると、茶褐色の屋根瓦と緑色の鎧戸で統一されていて、雑然と建てこんだ家々が、ふしぎな雑然たる調和を見せている。シエナの町は美しい。(確かに一見ごちゃごちゃしているようで、統一された美しさがある不思議な町です)
 
 パリではパレ・ロワイヤル近くの大阪で日本食を食べる。2000年ころにもパレロワイヤルのところに大阪という名称の日本レストランがあった。それと同じかは不明。自分の滞在中に無くなってしまったのは、たいへん残念だった思い出がある(笑)。