マキアヴェリ 戦術論

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戦術論
ニッコロ・マキアヴェリ 著
浜田幸策 訳
2010年3月10日 第1刷
 
 
龍馬ブームの昨今、坂本龍馬の一番の功績は何かと思うことがある。
竜馬がゆく」を読んだのがかなり昔のことなので、記憶は不確かだが、「反目していた薩摩と長州の和解を取り持った」という点が具体的なことでは一番大きいように思う。
抽象的な面では、いろいろな意見があるかと思うが、そのうちの一つとして「幕藩体制後の新しい日本の姿を描こうとした」というのがあるかもしれない。
この「戦術論」の作者ニッコロ・マキアヴェリの場合はどうだろう。
抽象的な面では「君主論」により、「冷徹に、現実的に権力のあり方を説いた」というのかもしれない。
そして具体的に行った最大の功績は、フィレンツェ政庁勤務時の「国民軍の創設」と言えると思う。
欧州における中世、戦争はといえば傭兵により戦われるのが常だった。
それぞれの国家や都市国家内部では、実際に戦うことができる兵士がおらず、ある意味戦争のプロである傭兵を金で雇うのだが、問題点も多かった。
所詮傭兵なので、依頼した国家に対する忠誠心もほとんどなく、金額の交渉などもややこしく、ときとして厄介者となり、逆効果になることもあった。
マキアヴェリ自身も、フィレンツェの交渉団の一員として、傭兵制度により苦い思いをしていることも多かったようである。
それ故フィレンツェ人自身による国民軍の創設を強く訴え、フィレンツェにおいて、ついには当時としては画期的な国民軍を創設した。塩野七生先生の著作、「わが友マキアヴェッリ」では「わが生涯の最良の日」と題された章で、彼の思想を実現することができたときの模様が述べられている。
この「戦術論」を読むと、いかにマキアヴェッリが市民軍のことをこと細かく研究、および理解していたかを実感することができる。老いた名将と前途有望な若者の質疑応答という形をとっているのだが、市民軍の武器、訓練、戦闘隊形から都市の防衛に至るまで、きめ細かく叙述されている。
この軍隊や戦略だが、多くの点でローマ帝国のシステムや実戦例を参考にしている。ローマ帝国が軍隊の面でもいかに優れていたかが伺える。
そしてマキャヴェッリのこういった面のノウハウが、後世のフランスの国民軍構想を予言している、とのこと。