物語 ストラスブールの歴史
物語 ストラスブールの歴史
国家の辺境、ヨーロッパの中核
内田日出海 著
中公新書2027
2009年10月25日 発行
フランスとドイツの間で揺れ動いてきた、ストラスブール(シュトラースブルグ)の歴史を叙述した新書です。
写真の表のように、ローマ帝国の要塞都市からはじまったまちの歴史が、それぞれの時代区分に分けて、わかりやすく述べられています。
この表のパノラマ以外に、三つに区切ってみると
(1)要塞都市、司教都市ないし神聖ローマ帝国内の自由都市としてのヨーロッパ的ストラスブールの時 代(~1681年)
(2)王国、近代国家または帝国の地方行政中心地としての辺境的ストラスブールの時代
(1681年~1992年)
(3)EUの一首都としてのヨーロッパ的ストラスブール(1993年~)
となっています。
いわゆる都市国家から国家の中の都市、そしてEUの中の都市、という流れは欧州の多くの街で共通なのですが、ストラスブールは副題の如くその地理的条件においても、よりその傾向が顕著であるといえます。
さらにストラスブールの景観の歴史を通じて確認できる6つの一般的特徴としては
(1)カテドラル、旧市街区のあるまち
(2)工業をもたないまち
(3)商業都市または港町
(4)軍事的色彩の強さ
(5)フランス的な建物群とドイツ的な建物群が併存するまち
(6)ヨーロッパの中枢機能をもつ建物群の存在
をあげています。
(1)についてはよく目立つ立派なカテドラルと旧市街が残っています。(2)についてはいわゆる工業地帯らしいごみごみしたところはそんなにありません。その分(3)が出てくるわけですが、やはりライン河のそばで、海運が発達している点が大きいようです。そして(4)の軍事的色彩が強いことにより、破壊と創造の結果、(5)のようなアルザス的な基底の中に、仏独の色彩が出てしまっているようです。
そして(6)は欧州議会などのEU関連の建物群に見られるところです。
それにしても長い歴史の中で、1993年が一つの大きな転換期になっているというのは、同時代に生きる私たちにとっても大切なこととなってきます。近くEU大統領が誕生し、ますますEU統合が強化されつつある今、このストラスブールという街にも引き続き注視していきたいと思います。