「三つの帝国」の時代

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「三つの帝国」の時代
アメリカ・EU・中国のどこが世界を制覇するか
パラグ・カンナ 著
玉置悟 訳
講談社
2009年2月19日 第1刷発行

この本では、冷戦後のアメリカの一人勝ちとなった後の、現在から未来の状況を、アメリカ・EU・そして中国の三つの帝国が支配してきているという観点から論説している。
アメリカが世界各地に展開する強力な軍事力と経済力、EUの緩やかな拡大、中国の商業力に根ざした支配。
外交スタイルで言えば、同盟をつくるアメリカ型、コンセンサスを基本に据えるEU型、助言・忠告を中心に事を進める中国型、という分類をしていた。
そしてこれらの帝国の支配の中で、いわゆる発展途上国などとも呼ばれる、第二・第三諸国がどう立ち回り、発展および生き残りの道を模索しているのか、を多くの例をあげて説明している。
同じ地域、あるいは同じような環境の国々でも、その国の支配者の外交や統治能力の差により、国力に多大な影響を与えているのを痛感する。
例えば豊富な資源がありながら、それを単に他国に収奪されるだけの国もあれば、その資源を重要なカードとしてしっかりと使い、大国という大波の中をサーフィンのように上手く乗りこなしているような国もある。
また国内においても、富の偏在が見られ、地方は全く貧困状態で、首都だけ巨大な張りぼての如く、立派にしている国も多い。

日本については、一応先進国ということで、第二・第三諸国中心のこの本ではあまり触れられていない。それでも他国の仁義なき外交バトルの話を読まされると、呑気な日本が、将来どうなっていくかつくづく不安になってしまう。
まあそれでも、帝国であろうが無かろうが、単に国力の増強だけにとらわれることなく、国民全体の機会が平等で、甘えではないある程度のセーフティネットが保障されているような国であってほしいものだなと改めて思う。

筆者は30代の若さだが、多くの文献に頼るだけでなく、実際に世界各国を訪ね歩き、自分の目で現地を見つめ、なおかつ現地の生の声を随所に引用している。それが文章を無味乾燥なものにせず、説得力のあるものにしている。