ホメーロスのオデュッセイア物語

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ホメーロスオデュッセイア物語
バーバラ・レオニ・ピカード
高杉一郎 訳
1987年5月25日 第10刷発行
岩波書店

この本は、ホメーロスオデュッセイアを子供向けに書きなおしたものです。
しかしながら、その割には、文字数も多く、少なくとも自分の子供並みの知性では(笑)、読み応えがあります。
3部構成で、物語の順序においても原本に変更を加えており、時系列でわかりやすくしています。

最初の部ではトロイア戦争を終えたオデュッセウス王とその部下が、故郷のイタケー島に帰ろうとするのですが、地中海のあちこちでいろいろな目にあい、漂流した揚句、オデュッセイア一人だけがその島の海岸に打ち上げられるところで終わっています。
部下は全員死に、一人だけ生き残った原因としては、「水戸黄門」のうっかり八兵衛のように、部下たちの責任によるところもあるのですが、オデュッセウス自身の判断ミスによるものもあります。
とくに、隻眼の大男の洞穴での判断はまずかったです。最初誰もいない洞穴に入ったとき、部下はここは怪しいから、そこの食べ物だけ取ってすぐ引き返そう、と言ったが、オデュッセウスは「主人がたくさん贈り物をくれるだろう」と主張し、大男が帰ってくるまでとどまってしまったため、結局部下は大男の餌食となり、生き残った人も閉じ込められてしまいます。
しかしなんとか大男の目をつぶし、そこから逃げ出すことができましたが、別れ際にわざわざオデュッセウスが自分の名前を名乗ってしまいました。
実はその大男は海の神ポセイドンの息子であったため、天罰により以後地中海上を漂流する羽目になってしまいます。
怪しさを心配するよりも、贈り物を期待しているところが、いかにも王様らしいですね(笑)。

第2部では、いったんオデュッセウスはおいておいて、彼の帰還を待つ息子や妻の出番となります。
その屋敷では、オデュッセウス王の不在により、残された美しい妻の求婚者たちに占拠され、彼らが王室の財産で食べまくり、ブドウ酒を飲みまくるような状態になっています。息子や妻は忸怩たる思いでそれを見ています。
息子はそんな現状を打開するため、神様のアドバイスに基づき、集会所で演説したり、近隣の国の王様に会い、父の消息を尋ねたりしています。
宴会や饗応で、やたらブドウ酒を飲む場面が出てくるので、読み進めていると自分もワインを飲みたくなってしまいました(笑)。

最後の部では、神の力でひとまず老人の姿に変装したオデュッセウスと息子、そして支援者たちが、求婚者たちと戦います。
ここでは、オデュッセウスも深謀遠慮で、慎重に復讐の作戦を練り、着実に実行していきます。

このような古代ギリシャの話では、人間たちと、ゼウスをはじめとする神々が混在し、物語にファンタジー性も加えやすくなっています。
人々の運命が、あらかじめ定められているようでも、その中で精一杯の努力をしようとする姿には、古代ギリシャ人の人生観が色濃く現われているような気がしました。