ゲーテ著 イタリア紀行 第二次ローマ滞在

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イタリア紀行(下)
ゲーテ 著
良守峯 訳
岩波文庫
2007年5月15日 第49刷発行

ゲーテのイタリア滞在の内、1787年6月から1788年4月までの、第二次ローマ滞在時について綴られた。
題詞として「ながき生命と世界統治の力とがこの都にあたえられ、日出る所も日沈む国もその支配の下にあらんことを。」というオヴィディウスの言葉が捧げられていた。

諧謔聖人フィリッポ・ネリの武勇伝というか、奇行について書かれている。ある種破戒僧という言葉が似合うその生き方に対し、ゲーテは「世間からはむしろ愚者とみられ、それによって一そう神および神聖な事物に沈潜し修行しようとする彼の思いは、彼のつとめて止まなかったところであり、」と、卓越した部分も認めている。

ローマの謝肉祭についての詳細な模写。仮装や行列、衛兵や競馬などの乱痴気騒ぎの様子が生き生きと描かれる。そのうちクエーカー教徒の調練の模様が面白い。12人が組みとなり、つま先で直立し、小股にしかし足早に横隊を組んで進軍してくる。そして突然、ある場所で縦隊になり、ちょこちょこ走っていく。それの繰り返しで街路に繰り込んでいくが、突然一本の焼き串に突き刺されたように、一軒の家に押し込まれ、姿を消していく。
なぜかこれを読んで「パタリロ」のタマネギたちを思い出してしまった。

4月にローマを離れる時、ゲーテの悲しい心中にはやはりオヴィディウスの哀歌が浮かんでくる。

ローマを去りなんとする最後の夜の
哀しき街の姿を心に辿り
懐かしきものの数多をすてさりしかの夜を思えば、
はふり落つる涙の珠。
かの夜、人声も犬の遠吠もしずまりて、
月姫のみ、空たかく夜の車を馭しいたりき。
われはそを仰ぎ、またカピトルの殿堂を眺めしが、
ま近にわれらが守護神の宿り給いしは今も徒なりしよ。