アイルランド「ケルト」紀行

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アイルランドケルト」紀行
エリンの地を歩く
武部好伸 著
彩流社
2008年12月20日 初版第1刷

この本の著者の方は、ヨーロッパ各地のケルトに関する遺跡を訪ね歩いておられます。
その紀行シリーズも10巻目となり、この巻で一応の区切りということです。
今回紹介の最後の巻は、ケルトの影響が一番強く残っている、といわれるアイルランドの紀行です。
車は運転せず、ほとんどバスや船という公共交通で、最後の手段としてタクシーという条件で、アイルランドに残る様々な遺跡を踏破しているのには感心します。
観光名所として有名な所はもちろん、現地の人でさえよく知らない場所までも訪問されているのには、凄いなあと感服しました。
自分の経験では、ダブリンとゴルウェイを起点とし、バスエーランの観光バスでおもな観光地を巡るので精一杯でした。

ケルトと一口に言っても、その民族的、文化的定義はなかなか難しいようです。
アイルランドの場合、初期キリスト教の遺跡が、ケルト文化の典型と見られている例が一番多いそうです。
その中でも最も典型的なものが、円をあしらった十字架なのですが、これについての成り立ちは、異教時代の太陽崇拝の名残という説や、ドゥルイド教の根本原理である「生命の永遠性」をあらわしているとか、いろいろな説があるそうです。
まあ、キリスト教を布教する段階で、今まで他の宗教や伝承にとらわれていた人々に、いかに上手く普及させるかということに対する、伝道師の苦労を象徴するようです。各地の風習にあった伝道をしようとすると、どうしても妥協や折衷もやむをえないようです。
「事件は現場でおきているんだ!」という映画のせりふがありましたが、アイルランド特有の初期キリスト教の遺跡を見ていると「布教は現場で行っているんだ!」という古の聖人たちの叫びが聞こえてきそうです。