マキアヴェッリ山荘の思い出

林達夫・回想のイタリア旅行
田之倉稔 著
イタリア書房 発行
2008年6月17日発行

林達夫という、学者の方の、イタリア旅行に随行した方による回想記である。
この学者の方については、不勉強で存じ上げないが、文中から、著者の林氏に対するオマージュがこみ上げてきているのがよくわかる。
その一方、ガイドブックのような面も入れて欲しいと言われたそうで、そのご苦労も伺えるような感じだった。

この本に興味を持ったのは、数あるイタリアの名所の中で、珍しくもマキャヴェッリ山荘を訪問していた点にある。
「その当時では珍しかったが、今ではガイドブックにも載ってある」と書いてあったが、自分の持っていたトスカーナのガイドブックには残念ながら載っていなかったこともあり、貴重な記録である。
その中で、マルセル・ブリヨンという人がマキャヴェリについて「不忠な傭兵隊長を死刑に処し、手塩にかけた優秀な部隊を閲兵し、カテリナ・スフォルツァの秘密の意図を探索した男」と書いていた一文が気になった。
塩野七生先生の本を読んだ者としては、「不忠な傭兵隊長を死刑に処すよう裏で手をまわし、農民部隊を閲兵しながら、その部隊を認可する法案が通るよう画策し、チェーザレ・ボルジアの秘密の意図を探索した男」と勝手に替えたくなってしまう。
まあこの点は、ブリヨン氏と塩野氏の、マキアヴェッリフィレンツェにおける影響力や身分についての見解の相違、リアリストかどうかの違い、作家と学者の違い、そして男と女の違い、などなどが反映しているんだなあと思う。
自分としては塩野説に肩入れしたいが、まあ色々な見方がありますね~、と感心しておくのが無難だろうし、柔軟な態度と思う。
ちなみにこの本では、ここからフィレンツェのドゥオーモが見えるのかどうかは書いていなかった。
やっぱり自分の足で、見に行かなければいけないようだ。
勿論その時も「わが友マキアヴェッリ」を持っていくが、ついでにちゃんとマキャヴェッリ山荘のことまで書いてあるガイドブックも、できれば持っていきたい。