ルネサンスの人間像(モンテニュー・セルバンテス・ルター)

思想の歴史 5
ルネサンスの人間像
野田又夫 編
昭和41年8月5日 発行

モンテニューの個人主義思想と東洋の老荘思想の類似。
すなわち自由な人間性を養うために名利を避け、欲望を節し、世間から隠遁する。
天下の治乱は、なりゆきにまかせ、世と共に推移して人生を楽しむ。

ドン・キホーテ」に潜む、作者セルバンテスの人生哲学。
海賊に襲われ、捕虜となる。義侠心の強い彼は、仲間をかばうため逃げられず、何度も死刑に処せられそうになる。なんとか自由の身となるが、様々な苦労をし、ドンキホーテの成功は晩年であった。
そんな自分の人生を振り返り、半狂人のようなドン・キホーテと、現実的打算的なサンチョ・パンサのコンビが、あたかも自分の二面のように活躍する。
ドン・キホーテが、最後は「おさらば」と平静に死んでいき、セルバンテスも激動の人生から産卵を果たした魚のように、満足しきった気持ちでこの世を去る。

最初は免罪符に対し純粋な気持ちで抗議したルターだったが、教皇や領邦など現世権力を巻き込み、大きなうねりとなってルター自身をも襲ってくる。
それに対し神学的論争により立ち向かうルター。
それによりルターは過激さをまし、それが現世権力にも利用され、拡大していく。