カオールの酒壺 歴史へのひとり旅

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カオールの酒壺 歴史へのひとり旅
木村尚三郎 著
講談社
1983年5月10日 第1刷発行

著者の方は、欧州中世史を主に研究しておられる、著名な学者さんである。
この本では、難しい話は少なく、主にフランスのいろいろな街を訪れた時のショートエッセイを中心に構成している。
今から30年以上前の話になるため、写真もどこか懐かしく感じる。
また、日本が経済的に上り調子の頃で、一方欧州が不景気の頃だったような時代背景も感じる。
それでも、訪問した街では、歴史遺産を見学し、料理やぶどう酒に酔いしれていたため、その面の欧州の豊かさは、当時でもはっきり認めておられた。
ちなみに、題名のカオールとは、南フランスの街で、フォアグラと、赤ぶどう酒が有名な所だとのこと。
そこでステーキと地元の赤ぶどう酒を味わい、すっかりご機嫌になった。
その赤ぶどう酒は、ピシェ(柄のついた酒壺)に入っていたという。
ビンでぶどう酒を飲むのもよいが、そのような酒壺で飲むのもなかなか味わい深いものである。
ただ、その日の酒壺は、特大で、まるまる一本分だったらしい。
それで飲みすぎ、ますますご機嫌になってしまわれたようだったのだ。
その体験を本の題名にしているのが、いかにもフランスの地方の町での幸福、つまり料理と赤ぶどう酒の味わい、というのを象徴いるなあ、と思う。