ラファエルロ 神のごとき剽窃家

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ラファエルロ
新潮美術文庫3
平成15年5月15日16刷

執筆者の若桑みどり氏はラファエロを「剽窃家」と呼んだ。しかしその形容詞には「神のごとき」とつけて。さらにゴーギャンまで引っ張り出してきて「芸術家は革命家になるか、剽窃家になるかのどちらかだ」という彼の言葉までつけて。

「レオナルドの生涯」という伊仏合作のテレビ映画で、ラファエロは一言も口をきかせられないと言う登場の仕方をした。モナリザを涙をためて見つめ、黙って去って行く無口そうな若者として。

彼の聖母子像は、自然で解放された中、美しく若い聖母と、可愛らしい幼きキリストを描き、信心深い大衆から微笑を持って迎えられる。

ヴァザーリには、ダヴィンチやミケランジェロのような大天才と同じ時代に生きた芸術家として、ラファエロに対する一体的な共感が感じられる。努力と刻苦がラファエロを造り上げたと。

シャンティイのコンデ美術館の三美神を、ラファエロが造り上げた完璧な世界と讃える。彼にとってはマリアが天上のヴィーナスであり、ヴィーナスが地上のマリアだったのか。

ラファエロのヴァチカンでの苦闘。その中で、全体の構成から言えば「ペテロの救出」が最大の収穫ではないか。

「ガラテアの勝利」の真ん中のヴィーナス。女性の古代的理想像。

ラファエロの死んだ時が、ルネッサンスが終わった時ではないかという意見。いや、ラファエロなら、生き延びてもマニエリズモの谷間を行き、バロックの大河に流れていったのではないか、と。