ルネサンスの芸術家工房

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ルネサンスの芸術家工房
ブルース・コール著
1995年5月10日 初版第2刷発行
ぺりかん社 発行

ルネサンス期の名作についての画集や解説本はよく見かけるが、この本は、そういった名作が創られた工房についてや、美術作品に使われた材料、そしてルネサンス美術に類型と機能について叙述している。
当時は、いわゆる芸術家というものはほとんど存在していないと言ってよく、普通の職人といってよいような存在だった。
それ故、地位も今ほど高くなかったようだ。
また工房内でも、単に絵画だけでなく、様々な種類の工芸品ができるような状態だったようだ。マルチタレントでないと、当時は生き残れなかったのだろう。
また画材も今のように簡単に買える訳でなく、工房の中で工夫しながら、自給自足で工面していた。
例えば画板などにしろ、工房内で徒弟が下ごしらえを十分にした上で、描かざるを得なかったようである。

ルネサンス絵画の中では、フレスコ画など、壁に直接描いているのがよく見られるが、それの修復というのは、特殊な接着剤を塗った大きな紙を貼り付け、絵の具を壁からはがすという手法がとられているようだ。
その際、壁から、下絵が出てくる。
それが元の絵と殆ど同じ場合もあれば、かなり違う場合もあるらしい。
時空を越えて、見えなかったものが見えるというのは、かなり面白い気がする。