ローマ人の物語ⅩⅡ 迷走する帝国

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ローマ人の物語
迷走する帝国
塩野七生 著
新潮社
2003年12月15日 発行

カラカラ帝からのローマ皇帝
めまぐるしく変わる皇帝。
今までと比べると簡単に擁立され、簡単に殺されるような印象。
ついには狡猾なペルシャ王シャプールにより、捕虜になるという屈辱まで遭わされる。
ペルシャ側では、この「偉業」をプロパガンダするため、表紙の写真のように、岩壁に浮き彫りを彫らせた。
馬上のシャプール1世にひざまずく二人のローマ皇帝

蛮族の絶え間ない襲来により荒らされる国境。
ガリア帝国などという訳のわからないものまで出来てしまう。
当然経済的にも落ち込む帝国。
薄くなった当時のコインが経済悪化を今に伝える。

救世主のような皇帝も現れない。
カエサルのような海千山千の顔、またアウグストゥスのような整った顔の中にひそむ慄然とした冷徹さ。
彼らのような顔の持ち主もいない。

社会不安が広まる中、多神教のローマの中で、一神教で、当時としては新興宗教だったキリスト教が力を持ちはじめてくる。
ユダヤ教の様な、一民族の宗教にとどまらない、あたかも帝国を乗っ取るかのような力。
多くの殉教のもと、静かに力を蓄えていく。