ローマ人の物語ⅩⅠ おまけ 皇帝との夫婦漫才

ローマ人の物語将気涼罎如皇帝マルクス・アウレリウスが哲学の師、フロントに書き送った手紙に対し、我らが塩野先生が茶々を入れた部分が、切なく、なおかつ面白いので転載します。
往年の、名・夫婦漫才師、人生幸朗・生恵幸子師匠によるボヤキ漫才を思い出してしまいました。
「 」が若き日のマルクス・アウレリウスの手紙より、( )が塩野先生のお言葉です。

「わたしは怒り狂っているのです。同時に悲しみの極にもあるのです。求めているものが、一向に見出せないのです」
(当たり前でしょう。そうそう簡単に真理が見出せるのなら、哲学史が三千年にもなるはずはない。)
「考え込んだあげく、自分と他の哲学者たちとの能力をついつい比べてしまうのです。」
(そんなことはしなくてもいいのに。)
「食事も進まなくなってしまい、頭の中は、考えがまとまらないゆえの焦燥で爆発しそうです。」
(そんなこと、するだけでもムダ。)
アテネの議会が議論の沸騰で収拾がつかなくなったとき、議員の一人が提案しましたよね。このような場合には全議員がまずは寝に帰ることを定めた、国法制定が必要だと。わたしもこの先例に習い、今は何もかも放り出して、寝に行くことにします。」
(けっこう、これが最良の方法です。)

若さ、そしてマルクス・アウレリウスゆえの苦悩に対し、さらっと現実的に流すお言葉との対称の妙、そして最後の解決法がオチになっています。