ローマ人の物語ⅩⅠ 内乱と皇帝セヴェルス

コモドゥスが暗殺された後、ペルティナクスが皇帝を引き受ける。
それには彼自身の野望があった訳でなく、近衛軍団の長官レトーが説得した結果であった。
ペルティナクス、このとき66歳、次の皇帝へのショートリリーフ的な役割だった。
もともとは元奴隷の子が、軍隊での実績を重ね、皇帝まで登りつめる。
しかし彼を擁立したレトーに報いる事は、「小事」であり、他の多くの難問を解決する事を優先した結果、レトーに裏切られ、たった87日間の皇帝在位を死をもって終える。

その後、レトーは、ディディウス・ユリアヌスを皇帝に担ぎ上げる。
しかし、それに異議を唱えた、各地の属州総督たちが皇帝に名乗りを上げる。
そして激しい内戦の結果セプティミウス・セヴェルスが皇帝となる。
内戦という、国家にとって、消耗しかならない結果による皇位収奪だった。

元老院会議により、そこが一度は決議したコモドゥス帝の記録抹殺刑の撤回を要求したり、26人の議員を粛清したりした。
そのような行動により、非ローマ的な専制君主として、軍事政権下への道を歩んでいく。
その後パルティア東征に成功するものの、長男カラカラと近衛軍団長官との対立が激しくなっていき、結果カラカラは長官を殺す。

更にセヴェルスはブリタニアへの遠征を決行するが、健康を害し死亡する。
真冬の北イングランドでの、憂鬱な死だった。

その直後、皇帝となったカラカラは、さっさとローマに引き揚げる。
そしてその一年後には、弟のゲタを殺す。
あちこちにあったセヴェルスの家族の肖像から、弟の顔だけが消されてしまった。
そしてローマは「三世紀の危機」に突入していくのであった。