ローマ人の物語Ⅸ(トライアヌス帝)

皇帝ネルヴァの指名により、属州出身のトライアヌスが皇帝となる。
皇帝としての責務の一つである安全保障。
その障害として、ダキア(今のルーマニアあたり)問題に突き当たる。
トライアヌスカエサルのごとく「ダキア戦記」を記したと言われるが、残念ながらそれは現存せず。
仕方なく、「トライアヌス円柱」のレリーフの各場面をを念入りに解説し、ダキア戦記を追っていく。
内容を解明していく方はたいへんだが、それを読ましていただくのは本当に興味深い。
兵站と建設工事をしっかり行うローマ軍。
ローマは勝利でダキア戦役を終える。

戦後の帝国全域の一大公共事業ラッシュ。
レンガに押された商標でわかるトライアヌスの業績。
また首都ローマにおける新たなフォールムの建設。

帝国各地からの請願や陳情に丁寧に答えるトライアヌス
あたかもホームページを開設し、そこに入ってくるメールに丁寧に回答しているかのよう。
更には裁判まで傾聴し、情報収集を怠らない。

20年に及ぶ治世。よい評判の故多く残る肖像。
その一つに尋ねかける塩野先生。
「あなたはなぜ、ああもがんばったのですか」
属州出身だから、と答える肖像。
「女性でははじめてだから」など先駆者、あるいは少数派ゆえ、更に頑張ってしまう人たちの一人だったのか。
皇帝トライアヌスは。