ローマ人の物語Ⅶ(クラウディウス)

カリグラが暗殺された後、クラウディウスはその血のつながりにより、次期皇帝に担ぎ出される。
クラウディウス自身は、体が弱く、あまり身なりもよくなかった。
しかし子供の頃から、ゲルマニクスに守られ、歴史の研究に熱中する。
そして50歳になり、無理やりつれてこられて、「第一人者」になるかを迫られる。
迷わず「第一人者」を選んだ理由は「エリートの責務は公益への奉仕」の精神による。
最初の仕事は、カリグラ殺害者の処刑。
従容に刑に服す大隊長ケレア。
元老院デビュー。演説は失敗に終わるが、くじけないクラウディウス
カリグラ時代の後始末をこなしていく。
国家反逆罪法による処罰の廃止、財政改革、北アフリカユダヤ問題など外交失策の巻き返し。
国勢調査や郵便制度など地味な部門にも力を入れる。
しかし彼も家族の問題に苦しむ。
そして妻のアグリッピーナの野望の犠牲になって63歳にて死亡。
死後すぐに彼をからかうセネカの一文。
「才気ある知識人にはよく見られる、人間性の優しさの欠如しか感じられない」セネカの一文。

元老院にも律儀に出席し、討論を存分にしてくれるよう頼み、法廷にもよく顔を出し、法律の公正な施行に心をくだいた。
誠心誠意に仕事を行ない、燃え尽きた13年間。
「ローマの神々ならば同情してくれただろうし、アウグストゥスならばこのクラウディウスを断罪などはしなかったであろうと確信する」という塩野先生の文に思いがこもる。