エラスムス(世界を創った人びと より)

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世界を創った人びと 12
エラスムス
栗原福也 編訳
1979年12月10日 初版第1刷発行

「世界を創った人びと」シリーズから、エラスムスを取り上げます。
ちょうどこの3月25日で、EUの基礎となった、ローマ条約から50周年となりました。
このエラスムスは「欧州人」という表現がふさわしい、もっとも古い人であるかもしれません。
ロッテルダムで生れた彼は、パリで遊学し、イングランドでトマス・モアと出会い、魂の祖国イタリアを訪れ、マルティン・ルター宗教改革に巻き込まれ、最後にはスイスのバーゼルで人生を終えました。
その他訪れた欧州内の都市は数知れずで、更に多くの図書が出版されました。
現在でも彼の偉業は残っています。
EU圏内の他国の大学で勉強する大学生に財政支援するプログラムを「エラスムス」プログラムと名づけているくらいです。

エラスムスの理想は「文化と宗教がよき学問によって基礎付けられた社会」でした。
しかしそんな理想はルターの宗教改革や、フランスとドイツ帝国との戦争で、破れる事となります。
彼自身、決してルターに反対だったわけではありません。当時の教皇庁の腐敗を攻撃する姿勢には賛成だったのです。
しかしルターの攻撃性、過激性には、温和なエラスムスにはついていけなかったようです。
そして更には友人のトマス・モアも断頭台の露と消えます。
その知らせにはエラスムスは何も書くことが出来ません。
彼の悲しみはあまりにも大きかったのでしょう。
その後すぐエラスムスバーゼルで亡くなります。
彼の「開明的で近代的な、また寛容で平和な精神」は理想のままで終わってしまいます。
現代社会でそれは実現されているのかと問いかけますが、ますます野蛮になっているだけかもしれません。

この本の表紙のエラスムス(写真)は、ホルバインという画家によって描かれたものです。
この角度から、執筆中の彼を描いた作品は数作あるようです。
ちなみにバーゼルの美術館にもあることを、NHKの番組で知りました。
バーゼルを訪問した時、この美術館にも立ち寄ったのですが、大聖堂そばのエラスムスの碑と同じく、気にとめることはありませんでした。
もし再び訪れるチャンスがあれば、改めて彼を偲びたいものです。