パリ・マルモッタン美術館にて

パリの美術館の中で、どこが一番お勧めか聞かれることがある。
もちろん、その人の好みによって違うため、どこが一番かなんて簡単には答えられない。
しかし、単に自分の好みから言うと、マルモッタン美術館と即座に答える。
16区、地下鉄の駅を降りて、公園のあいだを抜けていく。
そして小さな邸宅のような美術館に到着する。
単に作品の量からすると、ルーブルやオルセーのほうが充実しているのに決まっている。
しかし、実際全部鑑賞するとなると、かなり無理はある。
その点、マルモッタンはこじんまりとしている分、全ての作品を存分に見れる。
邸宅らしい品のよい調度品などを見た後、地下に降りる前に、あえて上にあがる。
ここでは、ベルト・モリゾなどの印象派の連中の、地味だが渋い作品を鑑賞する事が出来る。
彼女の絵画は、タッチこそ荒々しいものの、それにより何気ない家族の風景が夢の中に描かれているような気がする。
それが一室で十分に堪能できるのは、本当に幸せなひとときである。

地下に降りると、そこはモネの世界である。
自分の好みからすると、晩年のそれこそ画面に叩きつけるような筆致の庭園の絵はあまり好きではないので、その前はさっと通り過ぎる。
そんなひねくれものの自分としても、やはり「印象・日の出」はじっくり見ざるをえない。
あたかも水墨画のような絵画。
あらためて見ても、このような絵を当時の画壇に「どうじゃ!」と叩きつけた、モネの革新性に感銘を受ける。
単に自分好みとしては、モネも普通っぽい風景画が大好きである。
パリの美しい公園を描いた小品の方がいい。
地下を一通り見た後、もう一度上にあがり、あらためてモリゾの作品を見、彼女に思いを馳せる。
改めて、このような美術館がさりげなく存在する、パリが恋しくなってくる。