工事中の預言者たち(モーセの井戸・ディジョン)

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昼食を終え、少し街をさまよった後、モーゼ(モーセ)の井戸まで行こうか迷う。
雨はすっかり止んでいた。
ただ、街中からは少し遠い。またガイドブックには工事中とあったため、そこまで行っても実際見学できるかわからなかった。
結局、またディジョンの来るチャンスは、多分ないだろうと思い、無理を承知で行く事に決めた。外国だと、そのような気持ちが強くなり、どうしてもしぶとく、がめつくなってしまう。

駅裏から、鉄道に沿った幹線道路沿いにてくてく歩いていく。
左側には庭園があった。
ずーとまっすぐ歩く。どこにあるかよくわからない。ここかな、と思ったが違っている所もあった。
しかし、ようやくそれらしい敷地が左に見えてくる。道を左に折れ曲がる。
この井戸があるところは、もともと修道院だったらしいが、現在は精神病院になっている。
特に受付などなく、敷地内に入る。建物はそんなに多くなく、広い公園といった感じだった。幸い、井戸への順路はちゃんと標示してくれていた。
くねくね曲がり、たどりつく。
確かに工事ということで、まわりに機材などもほったらかしになっていたが、ガラス張りの建物の中にある彫刻はなんとか見ることが出来た。
小さな建物の周りを何回もまわり、じっくり鑑賞する。
この作品を彫った彫刻家はスリューテルという。ブルゴーニュ公国時代の1395年から1405年に作成した。
前回のブログでも触れたが、これも当時ブルゴーニュ領だったフランドルにゆかりがある。というのも、スリューテルは、もともとブリュッセルで彫刻の修行をした後、1385年にディジョンに来て名を上げ、この作品に取り掛かることが出来たからだ。
この彫刻、預言者たちが、知的でたくましい表情をしていたのが印象に残る。
ちなみに画家のマティスは、印象派の画家のカミーユピサロをこの預言者になぞらえていた。確かに彼を思い出させる風情だ。

再び街に戻り、出発までの時間、のんびりと路地を散策する。
ディジョン・ヴィル駅を発つ。TGVは冬の大地を、パリ・リヨン駅まで駆け抜けていった。

(参考図書 フランス ゴシックを仰ぐ旅 都築響一木俣元一著 新潮社)