大西洋からの風を浴びて(ロカ岬)

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ロカ岬の事をはじめて知ったのは、五木寛之の小説のあと書きだった。
小説の題は「戒厳令の夜」と、「黄金時代」だった。
その後書きでは、すぐ波土際のそばにモニュメントがあるような書き方だったので、バスから降り立った時は意外に思った。
というのも、切り立った高い崖の上だったからである。
「岬」というので、崖の上が当たり前といえば当たり前の話だが、先入観とは恐ろしいものである。

到着した時にはすっかり天気もよく、少し雲はあるものの、遠くまで青空が広がっていた。
180度以上の展望で大西洋を満喫する。はるか彼方の水平線まではっきり見える。
石碑の周りを歩く。その碑文には「ここに地果て、海始まる」という意味のことが書いているらしい。本当にその言葉がぴったりの場所だ。
恐る恐るという感じで下を覗き込む。白いさざ波がたっている。
南側に目を転じると、灯台がある。実際に使用されているのかはわからない。
更に向こうには、いく層かの崖がある。そして彼方の海辺に街が見える。
すっかりいい気分になり、多肉草が生い茂る灯台のところまでも歩き回る。

一旦旅行案内所に行き、最西端到達証明書を買う。
お姉さんもよく慣れており、愛想よく応対してくれる。
自分の名前を紙に書き、それをお姉さんに渡す。
それを見て、手書きの装飾字で名前や日付を書いてくれる。そしてロウ印を押してくれた。こんなものでもうれしいから、無邪気なものである。イノセントという英単語が思い浮かぶ。
でもうれしければいいじゃん、という気持ちにもなる。

案内所を出て、ふたたび海を眺める。
ずっといても飽きる事はなかった。この空と大海原をずっと体中で浴びていたかった。
しかしバスの時間は来る。
バスに乗り、大西洋からの追い風とともに、ロカ岬から離れた。