世界の言語ガイドブック 1 ヨーロッパ・アメリカ地域(前半)

世界の言語ガイドブック1 ヨーロッパ・アメリカ地域 表紙

世界の言語ハンドブック1 

(ヨーロッパ・アメリカ地域)

東京外国語大学語学研究所 編

1998年3月10日 第1刷発行

 

内容は各言語の「概説」「音と文字」「文法の特徴」「語彙の特徴」「参考図書」に絞り、「知って得する○○語情報」では〈人の名前〉〈挨拶の言葉〉〈数詞〉のトピックを扱っています。

 

イタリア語

現在、我々が「イタリア語」と呼んでいる言語は、トスカーナ地方の言葉、とくにフィレンツェの町のそれを基にした文学語が、中世末期から近世にかけて、知識人の間で共通語として受け入れられるのに至ったものである。

その背景には、トスカーナ地方の経済的・政治的繁栄と、いわゆる「三大作家」(ダンテ、ペトラルカ、ボッカッチョ)の文化的威信がある。

英語

英語の歴史上最大の事件は、1066年のノルマン人によるイギリス征服であろう。ノルマンディー公ウィリアムが、イギリスの王位継承権を主張して、ハラルド王に率いられたイギリス軍をへ―スティングズの戦いで破ったのである。それ以後数世紀にわたって、イギリス宮廷はノルマン人の王と貴族たちの支配を受けることになった。

したがって、宮廷などの上流階級はフランス語を、一般大衆は英語を用いる二言語併用状態が続くこととなる。

オランダ語

名詞にはドイツ語と同じように男性名詞、女性名詞、中性名詞の3種類あるが、現代オランダ語では男性名詞と女性名詞の区別はほとんどなくなっている。両者合わせて通性名詞ということもある。

オランダという国は国土の3分の1近くが海面下の高度にある国である。オランダ人は絶えず水の脅威と戦い、更には水を上手く利用しながら、国造りを進めてきた。そのためオランダ語は、治水や干拓・排水に関わる語彙を非常にたくさん持つことになった。

ギリシャ

ギリシャ語では、1つの語根に様々な接辞を付加して、あるいは複数の語を合成して、極めて自由、柔軟に多数の新語が生み出される。

古代スラヴ語

古代スラヴ語とは、スラヴ語に初めて文字が考案された9世紀後半から11世紀末までの文献の言語、すなわち、文語である。

スウェーデン

12世紀頃より中世期にかけて、ドイツのハンザ同盟都市よりスウェーデンにドイツ人商人が押しかけ、それとともにドイツ語が多量にスウェーデン語の中に流入することとなった。

スペイン語

基礎語彙を見ると、スペイン語は概ね保守的で、古典ラテン語に存在したような古い語を維持しているのに対して、フランス語・イタリア語は新しい語に置き換えている場合が少なくない。これは、イタリア、ガリアなどロマニアの中心部で起きた語彙上の革新が周辺部のイベリアまでは波及しなかったためと考えられる。

セルビア語、および、クロアチア語

クロアチア語セルビア語の語彙の異なりに関しては、両者の対立が深刻化する以前から、次のような背景があると言われていた。近代に入ってトルコ圏から脱し、 西側の文化に対する強い憧れを持って新しい文物をオリジナルの名称とともに取り入れたセルビアに対し、すでにドイツ文化圏に組み込まれ、その直接的影響に長年さらされてきたクロアチアでは抵抗感が強く、外来語スラブ語によって意訳する形で取り入れることが多かった。

クロアチアの外来語傾向は、連邦崩壊を契機としてさらに先鋭化した。連邦時代にセルビアと共通で使用していた外来語による行政用語の多くを独自に改訂し、新造語に換えるなどの作業が進み、両者の異なりに関する辞書も発行されている。

チェコ語

日本でミュシャの名で知られるチェコの画家アルフォンス・ムハも、「ハエ」を意味する語の一つの形である。

デンマーク

借用語の面では、かつてはハンザ諸都市との貿易が盛んであったことから、高地ドイツ語と並び 低ドイツ語系の語彙が多数流入した。それらは口語的な性格が強かった。

ドイツ語

ドイツ語の使用人口は世界全体で約1億2000万人、 世界第9位で、日本語とほぼ同じである。ヨーロッパ地域だけに限った場合、その数は約9300万人で、ロシア語の1億 100万人に続いて第2位と言われている。従って、ヨーロッパの言語の中では ドイツ語は、英語、フランス語、イタリア語 よりも使用人口の多い大言語ということになる。

ドイツ語を表記するのに、かつてはフラクトゥーア「ドイツ文字」 と呼ばれる独自のものを用いていたが 、現在ではラテン文字を用いる。