ロシア国籍日本人の記録 シベリア抑留からソ連邦崩壊まで

ロシア国籍日本人の記録 シベリア抑留からソ連邦崩壊まで

ロシア国籍日本人の記録

シベリア抑留からソ連邦崩壊まで

川越史郎 著

中公新書1173

1994年2月25日発行

 

激動の時代に、激動のソ連で様々な苦労をされたと思いますが、そんな苦労を感じさせないのはさすがですね。

 

第一章 ソ連軍の満州侵攻

1 ソ連機、わが兵営を急襲

2 ムーロンの戦い

3 ソ連戦車に向かって肉迫攻撃

4 小豆山に立てこもる

5 南満州を朝鮮国境に向けて南下

6 ソ連軍に投降

 

第二章 シベリア抑留生活

1 シベリアに送られる

2 黒パン工場

ロシア語を勉強する著者

名詞は実物が目の前にあるから覚えるのは割と簡単

動詞は日本人通訳の辞書を借りて意味を調べる。

こうして集めたロシア語とその意味を薄い木版に書き留め枕元に積み上げ、夜ごとに暗記した。

 

3 シベリアの春

4 作業監督「赤鬼」

5 ソ連残留を勧誘される

ウラジオ経由で帰国と言ってはコムソモリスクに運ばれ、サハリン行きと言いくるめられてはハバロフスク放送局に連れて来られた。

 

第三章 ソ連生活第一歩

1 モスクワ海外放送ハバロフスク支局

2 白系ロシア女性との交際 キム・ミネ氏の逮捕

3 二人の姉妹、ナージャとワーリャ

4 シベリア横断の旅

5 あこがれのモスクワ

レーニン廟に入り、おごそかな雰囲気の中でレーニンの遺体を見た。これもまた小さなロウ人形という印象で、正直いって大した感銘は受けなかった。

 

ソ連帰化したのは幾多の事情があるが、そのうちの一つに、国籍を取らなければロシア女性と結婚できないということがあった。

 

6 スターリンの死

著者はこの目でスターリンを見ている。

絵や写真に出てくる威風堂々たる人間ではなかった。

 

スターリンはもうこの世にいない。

偶像は消え、太陽は沈んだ。この混迷の中を、首領を失った羊の群はどこへ向かって動いて行けばよいのか。人々は途方に暮れた。

これがあの当時のいつわらざる国民感情であった。

 

第四章 ソ連邦の”雪解け”

1 フルシチョフの登場 スターリン批判

フルシチョフウクライナ人特有のGをHと発音するくせは、ウクライナ共産党第一書記として長年向こうに住んでいたせいであろう。

 

2 ガガーリンの宇宙飛行

この頃著者は放送局から外国語図書出版社に移った。

放送局は電波に乗ってしまえばそれきりだが、雑誌となれば、出来の良かった文章にちらりと目を通す楽しみもあろうというものだ。

 

3 プログレス出版社の頃

4 一時帰国願い却下 母と弟の訪ソ

 

第五章 フルシチョフ時代終わる

1 フルシチョフ失脚

1964年10月、フルシチョフが家族とクリミアで休暇を過ごしている時、1991年8月の未遂クーデターの際に、ゴルバチョフがクリミアのフォロスで休養していた事情と何とよく似ていることか、ひそかに党中央委員会が開かれた。

総会はフルシチョフの誤りを非難し、党中央委第一書記と首相のポストから解任する決定を行った。

 

スターリンの個人崇拝をあれほど非難したフルシチョフが、同じような復古現象を見て見ぬふりをするとは。

 

2 モスクワ大学時代

3 日本研究家、リヴォーワさん

4 岡田嘉子さんのことども

越境事件の時、手を振ったのがいけなかったとつぶやく嘉子さん。

日本よ、さらばという意味で手を振ったが、それを監視していた国境警備兵には、国境潜入を組織したグループにOKの合図を送ったと受け取られた。

 

第六章 ブレジネフの停滞時代

1 二十五年ぶりの里帰り

2 モスクワ五輪 時代に先がけた人々

モスクワオリンピックというソ連邦最後の大祭典は幕を閉じた。

それはあたかも、ロウソクが燃え尽きようとする瞬間に一段と輝きを増すようであった。

 

3 カザン市の日ソ青年友好祭

4 社会主義協会の人々

アンドロポフがすでに1983年にソ連の政治・経済・社会の抜本的改革を志向していた事実は忘れられてはならない。

 

第七章 第二の雪解け、ペレストロイカ

1 画期的な第二十七回党大会

ゴルバチョフたちお偉いさんたちが一人として勲章をさげていなかった。心に快哉を叫んだ。

 

2 ソ連共産党と私

3 ゴルバチョフの国内視察

4 禁酒キャンペーンとその失敗

1985年に始まったが密造酒の製造などがあり失敗した。

 

5 激動の一九八九年と九〇年

西ドイツによる東ドイツ併合は、モスクワっ子にとっては物分かりのよい従順な弟を失くしたような寂しい思いだった。

 

6 ボルガ川の魚釣り

 

第八章 ペレストロイカの終焉 ソ連邦消滅

1 資源豊富な国の物不足

集団農場で小麦が豊作だとしても、人手が足りない、トラクター用のガソリンの補給が遅れる。貨車が間に合わない。倉庫は老朽化で穀物を収容しきれず、一部は戸外に積み上げられたまま防水布をかぶせて一時をしのぐありまさ。

 

2 ”貧しき人々”と成金派

3 二十世紀末のロシアの若者

4 わが友、赤沼弘 息子たちの訪日

5 八月クーデターの失敗 必要だった新連邦

八月の未遂クーデタ―はペレストロイカゆえに引き起こされ、ペレストロイカのおかげで不発に終わったのである。

 

6 モスクワ 東京 ウラジオストク

 

おわりに

エリツィンの政治生命は、彼がロシア大統領になった時点で終わった。