ナポレオン街道
可愛い皇帝との旅
伊集院静 著
小学館 発行
2023年9月18日 初版第1刷発行
この本は、週刊ポスト誌上において1996年から1998年までに連載された文に加筆、修正、編集した作品です。
道理でヨーロッパにおける日本人観光客が今と違って、やたら元気なわけです。
以前ブログに載せた福田和也さんによるナポレオン探訪は、美食と美酒の合間でしたが、こちらの伊集院さんは、酒とギャンブルとゴルフの合間のナポレオン探訪でした。
ナポレオンについて書かれた本は三十万点を超えるという。
これほどの量はキリスト、釈迦とナポレオンくらいではなかろうか。
賭博行為の最初の取り締まりが行われたのは紀元前300年とあるのに、これが病的賭博として医学の診断分析に組み入れられたのは1980年以降に過ぎないのは驚嘆に値する。
ナポレオンの精鋭部隊にも娼婦たちはおそらく一緒について行ったであろう。
なぜならそこには間違いなく上客がいるからである。
アルプス越えなどあの厳しい行軍に随行したのだろうか。
案外彼女たちの方がしっかり進軍していたかもしれない。
フランス語を英語が追い抜いたのは、フランスがイギリスとの植民地争いに敗れたからだ。”七年戦争”である。
ミラノにも”平和のアーチ”と呼ばれる凱旋門がある。
その凱旋門は何やらいつ打ち殺されてもしかたのないような状態でひっそりと公園の隅にあった。
フランスの高級ワインの葡萄畑などは冷害を防ぐために、夜中の間畑のあちこちに重油を焚き、ヘリコプターを飛ばしてプロペラの風力で重油の火力を葡萄の実に当て続けた。
世界を、歴史を変えた人物としてキリスト、ナポレオン、カール・マルクスをあげるソルボンヌ大学の教授。
キリスト=宗教、ナポレオン=軍隊、マルクス=思想
赤はナポレオンの槍騎兵が着ていた深紅の軍服を、黒は聖職者、すなわち僧侶の服を意味しているというのが有力
またルーレットの赤と黒を意味するものという説もある。
精神の継承だけでは技術力も精神力もある時期を境に停滞する。
そこで必要なのが、突然変異である。
異端と呼んでもいいかもしれない。
この異端が、今ある停滞を打ち破る。歴史を変えるのも異端者の出現だ。
ナポレオンがブリエンヌの兵学校で子供たちの雪合戦でリーダーになり卓越した指揮をした話などは、どこにも確証はなく、後になってナポレオン伝説を作った人が想像で仕立て上げたもの。
士官になったナポレオンがコルシカ島の海岸で母、レティチアと偶然に遭遇し涙ながらに救出した話も、よくできた作り話。