屋根の無い時代のオランジュの古代ローマ劇場

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2001年当時のオランジュ古代ローマ劇場の壁

 

オランジュの古代劇場の巨大な壁です。客席の高い位置から撮影したものと思われます。
壁の上部には、古代ローマ時代においては舞台や壁の装飾を保護するために、木製の屋根が設置されていました。
しかし4世紀に火災により焼失してしまいます。 
ここを訪問したのは2001年の初夏だったと思うのですが、その時は画像のように、屋根はありませんでした。
しかし20世紀から、屋根を再建したいという気運が高まってきており、2006年にはついに鋼鉄とガラスによる近代的な屋根が完成しました。
遺跡の忠実な再建となると、少なくとも外観だけでも木製にするべきだったのでしょうが、壁部分の保護や舞台としての現代的な機能を考慮すると、現時点で最善とされる資材を使ったモダンなデザインの方がよい、という結論に達したのでしょうね。
もちろん、その決定までには、オランジュの人々やフランスの遺跡関係者による侃々諤々の意見の応酬があったのかと推測されます。
今となっては、屋根の無い時代の画像が貴重になっています。20年ほどの期間ですが、変わるときには変わるものです。同じような例として、シノンのお城も、訪問時には廃墟みたいな場所も多かったのですが、今は建物がしっかり再建されています。
遺跡というものが、過去を現すだけでなく、その時代時代の社会状況、そして人々の思想や意志を反映しているものだなぁと、いつもながら再認識させられます。


(Théâtre Antique&Musée d'OrangeのHPを参考にしました)