巨大な砦を巡って(アクロポリス周辺)

翌朝、早くに目を覚まし、窓からアクロポリスを見つめる。
普通の家も建てられている、こんもりした丘の上に、巨大な岩盤がへばりついている。
そして人工的に作られた壁の中に、神殿の上部が見える。
ホテルのさらに上の階なら、神殿がもっとよく見えると思われる。

ちょうどこちら側の角に、ギリシャの旗がはためいている。アイルランドエストニアでも思ったことだが、独立に苦労した国の国旗には特別な感慨がある。アクロポリス自体、敵に攻められた時の最後の砦という意味合いが一番強いわけで、旗がはためくさまがよく似合う。

ホテルを出て早速そのアクロポリスに向かう。
昨日行った道を登っていく。
右手に古代アゴラが見える。緑の中にヘファイトス(テセイオン)神殿は柱がちゃんと残っていて、遺跡らしくない。
アクロポリスの入り口近くからイロド・アティコス音楽堂を見おろす。
ここもフランスのリヨンやオランジュと同様、今でも使用されており、客席などもきれいである。
舞台背景の巨大な壁が、いい具合に朽ちており、いい味を出していた。

南西の方向に見えるフィロパポスの丘は、アテネには珍しく、山頂まで緑に覆われている。頂上にポツンとある遺跡は、命名の由来になった、2世紀ローマの執政官、フィロパポスの墓碑だということだ。

周囲を見渡した後、いよいよアクロポリスに入る。