古都プラハよ いつまでも

地下鉄の駅の入り口を見つけ、降りようとするとき、ふと前を見ると建物の下にあるアーチ型の短く、暗い通り道の向こうにプラハ城が見えた。
曇天でかすんでいるものの、大聖堂とその前の宮殿が見える。
思わず立ち止まり、しばし眺め、名残を惜しむ。
プラハの象徴に別れと感謝の気持ちを告げ、地下鉄への階段を下りていった。
ここプラハだけでなく、ヨーロッパの主な都市を見て感動することは、古い建物、古い街並みがしっかりと保存されていることである。
人によると、それはヨーロッパの後進性であり、単に過去の遺産に頼っているだけじゃねえか、という意見もある。
しかし商業主義や利便性の誘惑にめげず、過去の遺産を保存することは本当にたいへんなことなのである。そしてそれは、自分の地域の文化や歴史に対する愛情につながっているのだ。
チェコEUに加入し、経済的にも発展していくと思うが、古いものを引き続き残していってほしいと強く願う。
地下鉄A線にのり、終点まで行く。バス乗り場を探すのに少し手間取ったが、空港の標識があったのでそこでバスを待つ。
バスに乗り込む。しばらくすると、雨が降ってきた。フロントガラスのワイパーが激しく動く。自分がいる間は、曇りがちのときもあったものの、雨は降らなかった。晴男の面目躍如たるものがある。
プラハの郊外の自然を抜け、空港に着く。出発時間には十分間に合った。
チェコの通貨があまっていたので、チェコ産の白ワインを買う。チェコといえばビールのイメージが強いが、ちゃんとぶどう畑もあり、ワインの製造もしているのだ。
飛行機に乗る。途中窓から月を見る。地上から見るのとは違い、自分と月がほぼ同じ高さにあるような錯覚にとらわれる。
パリに着く。テロにも遭わず、無事帰って来れた事にほっとする。空港からエアフランスのバスに乗り込む。
エトワールに着く。凱旋門が美しくライトアップされている。パリの象徴に出迎えててもらったような感じだ。プラハ城を見たのと同じく、しばし立ち止まり、その威容を眺める。
翌日、冷やしておいたチェコの白ワインを思い出と共に痛飲する。さっぱりとした辛口で、おいしく飲み干した。